Thursday, January 28, 2010

iPadより紙の本がすぐれていると思う10の理由

なんだかなタイトルを付けてしまいましたが。

iPad、たしかに面白いと思います。美しいと思います。いまのメイン機はiMacですし、Snow Leopardですし、Mac Miniがサブ機です。でも、きっとiPadは買わないでしょう。なじぇか。

1. 紙の本の方が軽い
そらそうです。いくら薄くて軽いといっても、文庫本にはかないません。旅に出るのに文庫本が必須な私としては、iPad(680g)より、文庫本(350ページで180g)を選びます。

2. 書き込みができる
iPadのブックビューワーには手書きでメモをかけませんよね?線を引っぱったりもできない?読み返すときに困りますよ。

3. iPhoneの立場は?
iPadは電話の機能があるのでしょうか。おそらく、スカイプなどは使えるのでしょうが、電話機としてはやはりiPhoneに譲るでしょう。ということは、iPhoneユーザーは鞄の中にiPhoneとiPadを入れることになるんでしょうか。電話ができるとできないだけの理由で?iPhoneのビューワーの立場もありますし。

4. 本棚に並べることができる
これは個人の嗜好ですが、わたしは本を棚に並べるのが好きなんです。読んでなくても賢そうに見えたりしますし、だれでしたか、本は読まなくてもともに過ごす時間が大事なのだ、といった作家もいます。なので、わたしは本棚を愛します。たとえ妻から怒られようとも。

5. ブックデザイン
これもレコードがCDになったときに、かなりいわれました。いわく、大きなレコードジャケットの方がいいじゃないか、こったデザインができないじゃないか、と。一時期はすべて画一的なCDとプラケースになりましたが、時代はめぐり、いまでは紙ジャケやら重量盤LP(プラスMP3ダウンロード)やらがまたはやっていています。本も文庫本から四六判、雑誌サイズといろいろあるのが楽しいし、ブックデザインの楽しむ部分が(まったくなくなるとはいいませんが)少なくなるのは寂しいです。

6. 人との貸し借りができる
本を人に貸したり、借りたりすることはとても楽しいことです。それが好きな人との間ならさらに。それを赤外線のやり取りなんかで行いたくないです。好きな人の本を借りるのは、好きな人の触れた物を借りるというフェティッシュな感情もたしかにあると思いませんか。

7. アップデートが必要ない
おそらく、iPadはこれから頻繁にアップデートをくり返すでしょう。それによりできることも増えるでしょう。ですが、本にはアップデートは必要ありません。新訳がでたり、新装版がでるということはありますが、それはちょっと意味合いが違うと思います。古い訳でも古い装幀でも快適に読むことができます。

8. 検閲がない
これは、いま流通している本には抜け穴があることを意味しています。つまり、地下出版やリトルプレス、小さなマガジンなどをiPadで読むようにするには、iTunesがそうであるように、またiAppがそうであるように、アップルの(またはAmazonの、または政府の)承認が必要になるからです。公序良俗に反したり、輸出入にしばられないのが紙の本の特徴です。

9. 手ざわり
紙の本には紙の手ざわりがあります。当たり前です。つるつるの本からざらざらの紙まで、人間には触覚がだいじなのです。特に、音楽は昔から耳で楽しむものだったのに対し、本は常にみるだけではなく、人間の手で触られてきました。これは実は非常に大きなことではないかと思います。あのタッチスクリーンのつるつるした手ざわりが、すべての本に画一に適用されるのは考えられません。

10. 保存がきく
これが一番大事だと思います。なんだかんだいって、紙の本はけっこうぞんざいに扱っても、優に30年ほどはもちます。適正に、手厚く保存すれば100年以上でも大丈夫です。電子書籍はアップデートをくり返し、未来永劫、心地よく読み続けられるでしょうがアップデートしなければ読めなくなるでしょう。テキストデータだって危ういですよ。漢字の問題とかありましたよね。

以上、わたしがiPadを電子書籍としてみた場合、紙の方がすぐれていると思う理由です。番外編として、鼻がかめるとか尻がふけるとか充電がいらないとか、電子書籍だと古本屋が困る、というのもありますが(そうか、中古のiPadを売ればいいのか)。

iPadは、電子書籍リーダーというよりも、外出先でスマートに仕事のデータをやり取りしたり作成したり、サブのテレビ代わりに書斎においたり、ということはできるかもしれません。また、新聞のリーダーとしては利用可能だと思います。ですが、iPadでもKindleでも、やはり紙の本にはまだまだかなわないと思うのです。(新聞は日本では実売が出てしまうからヤバいかもですね。でも国外の日本人に届くのであればいいのかな)
それに、テレビをみたければテレビを見ればいいし、仕事は仕事机でやろうよ、というのが基本的なわたしの考えですから、やっぱりきっと買わないでしょう。

まだまだ、と書きました。いずれは、電子書籍になる日も遠くないと私も思います。でも、いまは時期尚早でしょう。と思うのです。

また、反対に考えれば、これらの条件が満たされた電子書籍があらわれたり、これらの条件が必要ない書籍、「そこまでこだわらなくても、読み捨てでいいんだよ」という本は電子書籍になるんでしょうね。また、いちどみんななるとも思います。米アマゾンでKindle本が好調なように。貴重本も出ているように。

でもいつか、きっと「紙のハードカバー本+ダウンロード版」という販売形態になるんじゃないかなぁ。

おお、こんな記事も。

Wednesday, January 27, 2010

殺人者の顔 ヘニング・マンケル著 おすすめエントリ

殺人者の顔
1991 スウェーデン MORDARE UTAN ANSIKTE ヘニング・マンケル Henning Mankell 創元推理文庫 423p

スウェーデンのベストセラー推理小説「クルト・ヴァランダー」もの第一作。

第2作目「白い雌ライオン」でもそうだったけど、社会背景をたくみに織り込むのはこの第一作からやっている。この場合はスウェーデン内の人種差別。それと亡命。舞台となっているのは南部スコーネ地方、ウスターレーンという辺鄙な地域の人口一万にも満たない田舎町、イースタ。主人公のクルト・ヴァランダーはそこの中年刑事。イースタは港町でバルト海に面している。バルト海の向うには旧東ドイツ、ポーランド、エストニア、リトアニア、ラトヴィアがあり、亡命者や経済難民がやってくる。この避難民問題が事件に影を落としている。

詳しくは本文庫解説に書いてあるが、スウェーデンの失業率は4%だが、移民だけでみると20%になっているのは知っておいた方がいい。とはいえ、「白い雌ライオン」が、南アフリカのアパルトヘイトと密接につながった物語であったほどには、こちらは亡命問題とからんではいない。いや、まあ確かにからんでいるのだけれど、それはあくまでも社会背景であり、クルト・ヴァランダー刑事本人は別の物語を生きている。

それは、かなりどうしようもない物語で、まず、妻からは三行半をつきつけられ、そのおかげで7キロ体重が増えた。19歳になるかわいい娘は理解できない年になり、知らない男と家を出て行った。父親はまだらボケがはじまっている。新しい検察官は若い女で、ときどきその女が裸で出てくる夢を見てしまう・・・

それでも事件を捜査しなければならない。そうとうしんどいと思うぞ。しかも、捜査は行き詰まってしまう。ぜんぜん方向違いの捜査をしていたのだ。事件はそのおかげで迷宮入りをしかけてしまうのだ。
事件や犯人よりも、その捜査過程よりも、なによりこの主人公クルト・ヴァランダーがひどく人間くさくて愛すべき男だ。それが一番印象に残る。酔っ払い 運転をして警官に見つかったり、レストランで未練たらたらではらはら涙を流したり、若い検察官に平手でなぐられたり・・・。

はー。

というぐらい大変な毎日を過ごしてる。
そして、その大変な毎日で何を彼は知るかというと「喪失」なのだな。

何度も、くり返し「喪失」について書かれた箇所が出てくる。喪失を認めたくない、変化を受けいれたくないという気持ちが彼をさらに大変にさせる。
しかし、最終的には受けいれる。喪失も、変化も。受けいれざるを得ないのだ。

そしてそのとき、クルト・ヴァランダーはやっと本当にすべてが終わったのだとわかった。離婚はもう取り消しが聞かない事実なの だ。夜、外でいっしょに食事をすることはこれからもあるだろう。だが、彼らの人生はもう二度と一つになることはないのだ。(略)こんなふうに取り残される ことを夢想だにしていなかった。これからは否応なしに孤独を引き受けさせられ、すべて自分で責任を取る新しい生活を始めなければならないのだろう。
我々はまるで楽園を失ったように悲しんでいる、と彼は思った。(略)しかし、古きよき時代は間違いなくもう終わったのだ。いや、待て。あの時代は本当によい時代だったのだろうか。我々がそう思い込んでいるだけではないのか。

谷口ジロー、関川夏央の「坊ちゃんとその時代」で、関川は坊ちゃんとは、明治という時代への喪失と惜別の物語だ、と解いた。この「殺人者の顔」も、同じだ。

変化と、喪失と、惜別と、愛惜の物語だ。そして、そこで僕は気がつく。個人ばかりではなく、社会も変化し、喪失していく。当たり前だ。そして受けいれがたい喪失や変化を受けいれるには、過渡期といわれる時間が(後から振り返れば)かならずある。この事件と捜査は彼個人の敗北の記録であり、社会の敗北と喪失の記録なのだろう。それは確かにシンクロして見える。社会的な過渡期とヴァランダー個人の過渡期の物語といえる。

そう彼はひとりごちた。おれ個人の敗北とは、事件の捜査としても、個人的な生活としても、また社会の敗北の記録でもある。そうした物語。なのにこんなにユーモラスで、力強いこの本は、そうとうオススメ。

スウェーデンではシリーズ全体で200万部売れたそうだ。人口が900万人しかいないのに、だよ!

Tuesday, January 26, 2010

Flavors.meをつかってみたよ

http://flavors.me/shiomizaka/

Flavors.meとは、new yorkのHiidef.incという会社(or team)がはじめたウェブサービスです。この会社は、はじめは靴の通販サイトなどをしていたそうですが、去年はじめたこのflavors.meが話題なのです。

現在、いろいろなサイトでいろいろなことをしている人が多いと思います。つまり、ブログしたり、twitterしたり、youtubeのチャンネルを持ったり、などなど。基本的にはそれらを統合したページを簡単につくることができるサービスです。
とかくと、けっこうフツーに思えるのですが、これがなかなか侮れない、いいサービスだと思います。

自分のページをつくるには(一般公開はまだしていませんので)、紹介コードをとる必要があります。
http://flavors.me/から、自分のメールアドレスをいれるとinvite codeがしばらくしておくられてきます。(ぼくは一日ほどできました)そのコードを受け取ったら、パスワードなどを設定して、いよいよ自分のページ作成ができます。

英語のページですが、設定はいたって簡単です。登録できるのはflicker、tumblr、twitter、vimeo(ビデオサービス)、last.fm、facebook、goodreads(読書サービス、これもなかなか面白い)、netflix(ビデオレンタル)、wordpress、posterous(写真共有)、Blogger、Linkedin、Etsy、foursquare、Youtube。しかも「RSS」というものもあり、ぼくのネットショップはcolor-me.shopなのですが、ここの最新入荷RSSも問題なく拾えました。

ページ全体のタイトル(たいていは個人名)、それらのサイトアドレス、またはRSSアドレスを入力していけば基本的なページ作成は終了。これだけでも非常に美しいサイトができます。メニュー名(Bloggerのブログタイトル名など)に日本語は通りませんでしたが、拾ってきたページ(RSS)の表示自体には日本語は問題ありませんでした。(mac osx/ snow leopard)

サイトのデザインはいく通りかのテンプレートから選ぶことができ、自分の任意のバックグラウンドを設定することも可能です。

こんな感じになりました。



タイトルのフォントがいろいろ選べるのはweb fontが上手に使ってあるからなのですね。(だから日本語が通らないのかも)

いろいろなウェブサービスがありますが、それらはすべて人の一側面を切り取ったものでしかないでしょう。当たり前です。ひとつのサービス(写真共有とか、文章とか)でしかないのですから。それらをひとつのページに統合することで、ひとりの人間(側面が統合された状態)に近づけることができる、面白いサービスだと思います。

また、当店のようにネットショップというところは、こういうサイトであるとか、新しい技術であるとか、ウェブでの見せ方などは、普通のお店でいうところの玄関のしつらえであったり、床にゴミが落ちてなかったり、という「気持ちよく買い物ができる空間づくり」になる部分であると思うのです。昔は「売っている中身がなんぼじゃい」と思っていましたが、自分が客であるときには気持ちよく買い物ができることも重要な店選びのファクターであるため、そうしたところもないがしろにしないでおこうと思っている次第です。と、大きな百貨店が閉店を決めた日に思ったのでした。(絶対揺り戻しがくると思うけど)

Monday, January 25, 2010

lightspeed championの新譜が発売!「LIFE IS SWEET! NICE TO MEET YOU!」



Lightspeed Championは、イギリスの若手音楽家。1985年生まれのDevonté Hynesのひとりユニットです。わたしは昔のこの人のバンド、TEST ICICLESというのはきいたことがないのですが、そのバンドをやめてひとりユニットのファーストアルバム「Falling off the Lavender Bridge」はでたときなぜか、すぐに買って、それこそ何日も何日も繰り返し聞きました。むちゃくちゃよかったです。iTunesでしか買えないライブとか、もろもろのシングルとか、買いそろえてしまいましたね。それが2008年。

ニューアルバムは、そろそろ出るんだろうなぁ、とサイトとかをみてはいたんですが、今日いきなりサイトをみたらそのお知らせがどーんとあって、しかもシングルのPVもしっかりみれて、うおお、これは!と予約しました。早速。Dominoレコード直販で、MP3付きのLP。

MP3付きのLPって、最近よくみます。この間のソニックユースもそうだったし、Beckもそうだった。とてもいい選択肢だと思います。それはさておき。

Lightspeed Championは、メロディもすてきなのですが、音響的にもすごいセンスだと思います。ほとんどいわれないし、だれも言及しないのが不思議でならないのですが、どのような音が鳴っているか、は音楽の重要な要素だと思うのです。友部正人さんに「友部さんの最近のCDは音響が独特で面白い」といったら、「そういうことを一番気にしないのがレコード会社かもね」といわれてしまいました。悲しい。それはさておき。今日は脱線が多いなぁ。

なんというか、ギターメインのポップで、絶望的なのだけど底抜けに明るい、そんな音楽をつくるLightspeed Championはイチオシです。とてもいい意味で若い!

今年はThe Booksの新譜も出るらしいし、ゴリラズはルーリード参加らしいし、うれしいです。