Sunday, December 27, 2009

今年のなんでもベスト10 第3位は藤幡正樹「不完全な現実」

いよいよベスト3になってきました。今年の第3位!

ベスト3 不完全な現実 デジタル・メディアの経験 藤幡正樹著 NTT出版

パチパチパチ。藤幡さんとは実は間にひとり挟まってのお知り合いです。あったことはないですが。ずっとお世話になっているマツコさんのお知り合いだったとか。
それはともかく、これは名著ですよ。なぜもっと取りあげられないか、まったくわからない。デジタル・メディア、またはメディア・アートというのは今の日本では既に過去のものとしてあしらわれていますが、世界的にはまったくそんなことはない。むしろ、PC/CPUの処理能力があがっているのでほんの数年前ならできなかったことも実現できる、非常に面白いことになっているのです。(それとは別になぜ日本でメディアアートが根付かず、過去のものになっているかは非常に興味深い)

藤幡正樹さんはメディア・アートの第一人者。現東京芸大教授。本書は2005年から2008年までに「インターコミュニケーション」に書かれたエッセイをもとに書き下ろしを加えて再構成されている。「リアリティとは何か」「ひとはリアリティをどのように感じているのか」をテーマに、その入り口としてデジタル・メディアを扱った、非常にユニークで刺激的な本だ。

本書にひいた多くの傍線から引用すると

現実感というものが常に人間の側で都合の良いように作り出されている。
不完全さを指し示すことによって、リアリティが現前するのではないか。
「現実は不完全であり、この現実では完成できないでいる事柄が存在する」
近代を作り出す上で、各個人が単一のリアリティの中にいるとするプロパガンダは非常に重要であったがしかしそれは幻想なのかもしれない。

第一章からだけでもこんな感じ。いかに自分たちが不完全な存在か、わかっているつもりでも別の角度からこのように再認識させられると戸惑う。
特に何かをつくろうと思っている(ブログを書いたりtwitterしたりも含め)ひと全般におすすめの今年のぶっちぎり刺激本。

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